<君に贈る7つの希求 第2番>



叶わぬものを望む行為は愚かですか


 


「これを手にすれば、貴方の欲しいものすべてが手に入るでしょう」

 声に出して読み上げると、なんだかとても神聖なようでいて、その実ひどく安っぽい。だって、「これ」だけで欲しいものすべてが手に入るのなら、どうして世界中の人は「これ」をもっていないんだろう。

「何だそれ」

 ひょいと横からスイが手元を覗いてきて、ナギは手に持っていたチラシをスイに見せてやる。

「『何でも願いの叶う石』らしいよ」

「…今でもこんなのあるのか」

 呆れたように呟いたスイに、今だからあるんじゃないかとナギは心の中で呟く。
 ――縋りたい。
 そう思う気持ちに呆れることも、責めることもナギにはできない。なぜなら、それは確かにナギの中にもある。

「9800円、かあ」

「何、ナギお前これ欲しいのか?」

「…え、あ、そういうわけじゃねーけど」

 少し、どもってしまったかもしれない。それに気づいたスイが可笑しそうに声をあげて笑って、それから肩を組んできた。

「買うなよ、これ」

「買わねーよ!」

「あははは、拗ねんなって。代わりに俺が聞いてやるよ」

「え?」

「お前が欲しいもんって、何?」

 どこか、ふざけたようにそう言ったスイの言葉に、ナギの心臓がどれだけ早く打ったかスイは知らない。

 欲しいと、思ったものがある。
 けれど、欲しいと思ったと同時に、それが手に入らないことも、ナギは知ったのだ。

「…教えない」

 スイが欲しいだなんて、教えない。

 言えない。







「ひかり」


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